南会津 尾白山、古町丸山 2010年4月10日

所要時間 5:20 車−−5:26 除雪終点−−5:38 林道終点−−7:57 尾白山−−8:29 丸山 10:05−−10:34 尾白山−−11:37 林道終点−−11:44 除雪終点−−11:49 車

ルート図。クリックで拡大



 国内最多の山は丸山か城山だったと思うが、南会津にも丸山がある。東側に古町集落があるのでここでは古町丸山としておこう。古町丸山は伊南川左岸に延々と続く稜線の途中にあり、このうち会津駒から山毛欅沢山の各ピークは登ったが、丸山以北は未踏である。丸山はその名の示すように山頂部が丸く盛り上がった特徴的な形状で遠くからも容易に判別可能で、このエリアの山岳同定の基準点となる。

 登山道は無いので残雪期が当然だと考えていたが、ネットで調べると手前の1398m峰(尾白山)まで夏道が開かれているのだという。これなら無雪期でもどうにか行けそうな気がするが、現実に無雪期アタックを敢行した記録がネット上にあった。無雪期の南会津といえばノラさんで、丸山まで大した距離ではないが強烈な薮でえらい難儀していた。こうなるとやっぱり残雪期がよろしいようで、雪が溶けないうちに出かけることにした。本当は新潟方面を考えていたのだが予報では気温が高く雪質は悪いと予想され、標高差が1500m以上もあるルートでは雪の状態が悪いと目的地に達することなく撤退の可能性があり、適度なルートの古町丸山に決定した。

 今回は白河ICから下郷、会津田島経由で伊南に入った。夜間の山間部で気温は0度と高めで路面凍結の危険性はいつもより低いが明日朝の雪質が気になる。古町に達して地図を広げ、目的の林道入口を探す。今回は宮沢入川沿いの林道を除雪されているところまで進み、あとは適当に左岸尾根に取り付いて山頂を目指す計画だ。この尾根には夏道があるので雪が無くても薮の心配が無い。現在のアプローチの都合上、このルートが一番いいと判断した。

林道分岐は目立たない標識あり ここに車を置いた

 林道分岐には尾白山の古びた案内標柱が立ち、集落を抜けて田んぼの中に除雪された林道が続いていた。どこまで除雪されているかと思ったらTV中継施設のあるピークに大きくカーブするところまでで、その終点には先客がテントを張っているという予想外の展開だ。今シーズンの残雪期の山で人間を見るのは初めてだ。終点は雪が多くて転回するスペースが無いのでそのままバックし、途中でUターン可能な場所もあったが他車の転回用に空けておくことにしてもっと下って宮沢入川を渡った先のスペースに車を置いた。

 翌朝、車のガラスの水滴は凍ることなく気温は高いままだった。こりゃスノーシューの方がいいかなぁ。飯を食い終わって着替えようとしたら軽トラが上がってきて横に止まった。腕章をしたじっちゃんが降りてきたので入漁券だとすぐに分かり、これから丸山目指すと話した。終点にも車がいることを話すとそちらにも行って戻ってきた。あちらは女性を含む3人組で同じく山だという(そりゃ当然だな)。朝早く雪が締まったうちに距離を稼いだほうがいいと言われ、ザックを担いで出発。

除雪終点 除雪終点先の養魚場
林道から見た尾白山の稜線

 除雪終点のテントはまだあり朝飯の最中らしい。住人は中で見えないので突然声をかけるとびっくりすると思って静かに通過した。左手には養魚場らしき建物があるがまだ半分雪に埋もれていた。林道上には先人の足跡があってそれに乗れば沈むことはなく歩きやすく大いに助かった。

積雪の林道を進む 林道終点の尾白山登山口
斑に雪が残る斜面 夏道

 林道終点には登山口の案内があり、ここから尾根に取り付く。まだらに雪が残った落葉樹林で下草はなくどこでも歩けそうだ。時々登山道が顔を出すが緩斜面であり道は濃くないように感じた。まあ、目印はあるので迷うことはないのだろが。こちらは尾根を適当に登るので夏道の存在は気にしない。そういえば林道の足跡は途中で消えてしまったが、丸山目指した登山者のものではなかったのだろうか。

 夏道は傾斜が急な場所では比較的新しいトラロープが流してあったりとちゃんとメンテしているようだ。標高870m肩で標識があり、右手の尾根を指して「小塩登山口」と書かれていた。

 標高950mを越えると雪が続くようになり待望の明るいブナ林に変貌し、雰囲気が高まってくる。しかし雪質が微妙でつぼ足で全く沈まない区間があれば足首までズボズボ入る場所もあり変化が予想できない。先人の足跡もなく雪質の目安にならないので、ジワジワと体力を消耗する前にスノーシューを装着する。さすがツールの威力は絶大で全く沈まなく名なり快調に高度を稼ぐ。若干上空に雲は出ているが大丈夫だろう。左手には南斜面の雪が落ちて荒々しい姿の稜線が見えているが、南斜面を登るわけではないので危険はないだろう。

 最後は小規模な雪庇を越えるような形となり傾斜が増すが危険を感じるほどではなく1120m肩に到着。ここで本日初めて北方の展望が開け、雪をまとった御神楽岳などがずらっと並んでいたが、この辺は土地鑑がないので東京に帰ってカシミールで展望シミュレーションしてからでないと山岳同定は不能だった。これから進む西への稜線は、すぐ目の前がちょっとしたナイフリッジだが、実際に歩いて見ると大したことはなく、問題なくてっぺんを歩くことができた。

 尾根が広がるとブナ林の気持ちのいい尾根で、黄砂の影響か雪が汚れているが、これは古い雪が出ている証拠でよく締まって歩きやすい。ここも夏道があるはずだが雪に埋もれて全く分からない。1278m峰への登りでは僅かに地面が見える部分があったが夏道のある部分ではないようだった。ピーク上は雪庇となっており展望が良かった。ここでようやく本日の目的地、丸山が姿を現した。その名に違わぬ丸みを帯びたドーム状で一目でそれと分かる形状だ。てっぺん付近は木が無く真っ白な雪原で大展望が楽しめそうだ。

 この先で尾根は平坦になり残雪量が減って夏道が顔を出すようになっていたが、ここを見る限りではよく整備されて夏場でも問題なく登れそうだった。1300m肩の登りはピーク直下でえらく急になっていて雪が付いていると登れるかどうか微妙な地形だが、ここはかなり地面が出ていたので強引に登れた。ここは雪があって藪が埋もれている時期なら北斜面を巻いて稜線に出るのが賢明な選択だろう。

 肩に乗った先は傾斜が緩んで尾根が痩せて夏道が出ていたが、その先で尾根が広がると大量の残雪に覆われた気持ちのいいブナ林となる。緩やかに登って1350m肩にたどり着くと意外な物体が出現。アンテナが撤去されたパンザマストとコンクリートブロック積みの小屋だ、何のアンテナが上がっていたのかは不明だ。小屋はかなり頑丈な作りでまだ使えそうだが、残念ながら入口の金属性ドアは施錠され入ることはできなかった。ここは避難小屋として開放するといいのになぁ。

 小屋の先は尾根が細くなり、かなりの部分で夏道が出ていた。1370m峰を越えてなだらかにつながる1380m峰に到着、ここが地元が尾白山山頂とするピークであり埋もれて頭だけ出た標柱があった。ここから南に伸びる尾根が面白そうなのだが、残雪期だと宮沢入川や中の沢は増水して渡れないだろうから、それなりに準備をしないと使いにくい。

 山名事典の山頂はこの次のピークであり、丸山に行くにはどの道通過するので先に進む。小鞍部を通過して急斜面を登ると山頂到着、こちらには標識や目印は皆無だった。ここまで来ると丸山は目の前で、緩やかな尾根でつながって短時間で簡単に往復できそうだ。あさぎまだらさんやノラさんが無雪期に格闘した蔓を含む激藪の一切合切が雪の下に隠れている。

 この先の尾根が本日のクライマックスで、青空の下、なだらかで広いブナが点在する尾根を闊歩するのは残雪期の最高の贅沢だ。途中、今年初めて熊の足跡に遭遇、南斜面へと下っていく跡だったが、雪庇で雪壁になっているところは戻った跡があり、野生生物でも強引には下らず人間並みに下りやすい場所を選んで雪庇を下っていた。まあ、カモシカクラスだとどう対処するか分からないが。

 細長い1370m峰の稜線上は五葉松と藪が出ていたので簡単に北側を巻いたが、無雪期だとここが唯一藪が薄い場所だという。その先の1400m峰は右から巻いてしまったが、これも残雪期でないとできない芸当らしい。無雪期だとここは凄い藪とのことで、何もしなくても進路が曲がってしまうようだ。

 いよいよ丸山は目の前で、山頂までブナの純林が続く気分のいい斜面だった。ここはスノーシューのヒールリフターを上げてグイグイと一直線に登っていく。南斜面で日差しのため少し雪が緩み始めているが踏み抜くようなことはなく快調だ。高度が上がるに従ってブナの密度が減っていき、最後は樹林が消えて一面の雪原となり、広い山頂の一角に到着した。

 遠くから見る地形と同じで山頂一帯は広い平坦地で、どこが最高地点かは明瞭ではない。三角点は2,3mの雪の下のはずで探せるわけもない。北側には古ぼけた小屋が半分雪に埋もれているのが見える。展望は南から東はいうことはないが、北から西は山頂から少し離れた「台地の縁」にブナが生えていてすっきりとは見えない。場所を移動すれば細切れだが枝に邪魔されず展望を楽しめるが、ちと大展望と表現するには難がある。まあ、それでも充分に堪能できる展望といえよう。

 雪原に適当にザックを置いて小屋に向かってみた。入口は西側にあったがドアは開いたままで、屋根は半分腐っていて小屋の中は雪でいっぱいだった。入口付近のみ雪が溶けていて、雨量計と思しき器具にアンテナが置いてあった。小屋の裏には雨量計を設置する台?が置かれた木があり、以前は雨量テレメータとして働いていたようだ。しかしこんな激藪の山に無雪期に登るのは相当困難なはずで、どうやって小屋を建てたのか不思議だ。

 今日は好天に恵まれているし時間に余裕があるので、雪原に断熱シートを敷いて昼寝としゃれ込んだ。たぶん1時間くらい寝てしまったと思う。それほど気持ちいい山頂だった。

 山頂で充分な時間を過ごし大満足で下山開始。後続の除雪終点のテント組がどこで出会うだろうか。登りの雪の感触では大きな踏み抜きは無さそうでスノーシューはザックにくくりつけて歩いた。尾白山山頂はまだ無人でブロック小屋近くで6人パーティーとすれ違った。これがテント組かと思いきや、聞いてみると今朝車で上がってきたという。このパーティーが除雪終点にやってきたときには既にテントはなかったという。あれ? テント組はどこに行ったのだろう? 夏道がある尾根とは別ルートで登ってきているのだろうか。まさか行き先が丸山以外とは考えにくいしなぁ。

 さらに下って1300m肩はパーティーの足跡を辿って北から巻いてしまい、平坦地に出ると3人パーティーが上がってきた。これがテント組に違いないが、どこで6人パーティーに追い越されたのか。推測だが862m峰から南に落ちる尾根を登ってきたのではないだろうか。養魚場からみるとこれはなかなか顕著な尾根であり、手馴れた人なら利用しても不思議はないだろう。朝方入漁料の徴収にやってきたジモティーもそんなことを言っていたし。

 これ以降はしっかりとトレースが残っており地図を引っ張り出す場面は無く登山口に到着した。

 

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